硫化水素の重さ

硫化水素の重さ

循環型脱硫装置の設置場所で、制御盤の床置きにしないと効果が薄れるか?という質問をもらったことがあります。理由は硫化水素は空気に比べて重たく(検索すると、密度1.36㎏/m³で比重は1.19と出てきます)、下にたまりまるとネットで見たかららしいです。
私の回答は「気にしないで良いです」です。確かに比重は1以上で空気よりも重たいです。厳密に調べると下にたまるかもしれませんが、感じたことがありません。その理由についてお話しします。

気体の重さ

固体の重さを比較するのには、重さと体積を測るのですが、気体だと測りに乗せるわけにもいかないので実際には測れません。高校生の化学の時間に戻るのですが、気体の重さは「分子量」によって決まっています。硫化水素の場合分子量34.1です。分子量は1molの重さ[g/mol](molって懐かしいですよね)。気体1molは22.4リットル(0℃、1atm)です。

分子量から密度を計算すると。

34.1(分子量)[g/mol] / 22.4[l/mol] = 1.52[g/l]  = 1.52[kg/m³]  になります。

先にあるのと数字が違うと思えますが、25℃、0.1MPa に換算すると 1.36 くらいになります。

1.52*273/(273+25)=1.39 (温度換算)
温度が25度も変わると1割くらい変わります。だから温度の換算をする場合は多いです。

1.39/1.013=1.37(圧力換算)
圧力は3%くらい。圧力は無視するときが多いです。

*気体の体積と温度や圧力の関係について詳しく知りたい人は調べてください (pv=nRT 検索)

気体の重さは密度で比較するよりのには「分子量」で比較するのが判りやすいです。

空気と比較

空気は主に窒素、酸素、アルゴン、二酸化炭素でできています。それぞれの分子量は

窒素  28.0
酸素 32.0 
アルゴン 48.6 
二酸化炭素 44.0

硫化水素は 34.1 
なので、酸素より重く、二酸化炭素より軽いです。このことから、空気を構成している物質とほぼ同じとわかります。
標高の高い山ならべつですが、立っていると酸素が薄いとかないですよね。

使用環境では

密閉した空間で何も空気が動かなければ、濃度に差が出る可能性もあります。たとえば、タンク内や槽など酸欠が疑われるような空間です。ですが、実際にそんな状態で循環型脱硫装置を使うことはまずありません。
循環型脱硫装置は制御盤や室内で使用されます。部屋なら多少の人の出入りやエアコン、盤内なら機器の発熱、それに脱硫装置にはファンがあるので、それらにより空気が動き、混ざります。

同じ部屋の中で濃度が違う場合は、どこかから硫化水素が侵入している穴がある場合が多いです。床面が高いとしたら、ステップフロアになっていて下に配線のための開口が開いている場合などがあります。硫化水素の重さに目を向けるより、侵入口を減らすことに目を向けるほうが良いと思います。

硫化水素で困ったときはご連絡ください。