硫化水素濃度と規制

許される硫化水素濃度

本ページは、硫化水素発生現場で作業環境を安全に管理したい現場担当者・設備担当者向けです。
「どの濃度から危険なのか」「どの基準を使うべきか」などの疑問に答え、現場対策の考え方まで整理しています。

装置を依頼される場合、寿命計算のためにお客様に許容濃度を確認します。その際逆にお客さまから硫化水素濃度をいくらにする必要があるの?という問いを頂くことがあります。いろいろな状態で何ppmまで許されるかは異なります。今回はそれをまとめてみました。

酸素欠乏危険作業主任者

今回一番高い濃度 です。10ppm

硫化水素の安全に対する資格に、「酸素欠乏危険作業主任者」というものがあります。酸素欠乏と硫化水素?って思われるかもしれませんが、「硫化水素」は酸素の少ない場所で発生しやすいので、セットにされていると勝手に思っています。この講習の中では、「10ppm」を超える場合作業してはいけないと教わります。作業する場合は安全措置を講じて作業する必要があります。

これは「労働者を守るため」というのが目的で法令のなかに定められています。「事業者は酸素欠乏症等を防止する必要がある」「酸素欠乏等とは酸素18パーセント未満と硫化水素濃度が100万分の10を超える状態のこと」です。100万分の10=10ppmです。

 

実際に人に害があるかは別とし、短期間であっても人がいるならこの濃度より低い濃度にしないといけない数値と理解しています。

日本産業衛生学会

次が 5ppm

日本産業衛生学会が勧告している許容濃度は「5ppm」です。これは労働者が1日8時間、週間40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で有害物質に暴露される場合に、ほとんどすべての労働者に健康上害のない濃度と判断されている濃度です。

「ほとんどすべての労働者」ですから、安全と危険の明らかな境界を示したものではなく、許容濃度を超えたことのみを理由に健康被害の原因ではないし、逆に超えていないことのみを理由に健康被害の原因でないとは言えないと注意がきがあります。

人が常に作業する環境だとこの濃度以下にしないといけない数値ですが、実際には臭いにやられる場合があります。硫化水素が5ppmある環境で長時間いると「頭痛がする」などの苦情が出る場合があります。硫化水素が毒であることを理解していることと臭いから来る精神的なものだと個人的には思っています。

特定化学物質

高濃度のガスがある場合は 1ppm

硫化水素の場合濃度1%を超えると特定化学物質になります。特定化学物質になると安全のための基準が一気に増えます。「局所排気装置が必要」「健康診断が必要」「避難経路」などなど・・・・・。危険な化学物質を扱うのだから仕方ありません。
作業環境測定基準があり、硫化水素の直接捕集の場合はガスクロマトグラフ分析となっています。

ここで初め「管理濃度」1ppmがでてきます。これ以下に管理しなさいという濃度です。

1%を超える硫化水素=猛毒なのでここまで高い濃度が出る環境は自然発生的にはまずない環境です。実験や製造で高濃度の硫化水素を取り扱う特殊環境しかありません。

悪臭防止法

なんのにおいかわかるとダメ? 0.02ppm?

悪臭防止法というものがあります。今までの規制は労働者を守るためですが、これは地域住民を守るためになるので少し意味合いが変わります。
規制地域内の工場・事業場の事業活動に伴って発生する悪臭について規制を行う等により、生活環境と国民の健康を保護するものです。このなかに「特定悪臭物質」というものがありその中に硫化水素が含まれています。悪臭防止法は「濃度」ではなく「臭気強度」というものを基準にしています。「臭気強度 0」の無臭から「臭気強度 5」の強烈なにおいまでの評価で、「臭気強度 2」の何のにおいかわかる弱いにおい 「臭気強度 3」楽に検知できるにおい の間の 「臭気強度 2.5」~ 「臭気強度 3.5」までが敷地境界線の規制基準の設定範囲になっています。(「臭気強度 4」強いにおい)

臭気強度

人の感じる臭いというのは曲者で、単純に濃度に比例しません。濃度を半分にしても臭いの強さは半分になりません。においの強さと臭気物質の濃度は「ウェーバー・フヒナーの法則」と呼ばれる式で関係があることが認められているそうです。(I=k log C+a  I:においの強さ C: 臭気濃度  k,a:定数)例えば、硫化水素 臭気強度4を臭気強度2.5にしたい場合 臭気強度4=0.7ppm 臭気強度2.5=0.02ppmなので 濃度を1/35 にする必要があります。
先の文読み替えると 臭気強度2.5=0.02ppm 臭気強度3=0.06ppm 臭気強度3.5=0.2ppm の間で規制されていることになります。

敷地境界

特定の場所から排気ではなく、敷地境界が基準です。そのため、煙突などの排気の場合「気体排出の規制基準」、排水に含まれた悪臭物質が拡散する場合の「排水の規制基準」などがあります。
煙突などの場合は大気に拡散されるので、単純に煙突の出口の濃度(におい)で判断されません。
排水も同じように拡散した臭気が地上1.5mの高さでの濃度が規制値を超えないようになので単純に排水の濃度で判断されません。

複合ガス

実際の臭気の多くは低濃度・多成分の臭気物質から成り立っています。養鶏業などの場合「硫化水素」のほかに「アンモニア」「硫化メチル」などがふくまれています。複合ガスの場合各々の物質でとらえるより、いろいろなにおい物質が混合した状態で全体として取られた場合のほうがより強く感じることになります。
硫化水素単体の濃度が規制値内であってもすべての臭気物質をふくめ、換算臭気強度を算出すると、規制値を超える場合があります。

悪臭防止

悪臭というのは人の感覚が入るため、あいまいな部分が多くあります。においの感じ方は年齢、性別、健康状態によっても変わります。実測した場合に基準値内だった場合でも、地域住民の苦情がなくならない場合などもあるそうです。問題解決には排出量を減らす努力はもちろん、苦情申し立て者と事業者の話し合い、理解が大切です。

実際には・・

規制値や許容濃度の理解は重要ですが、実際の現場では「発生源」「発生量」「装置配置」「換気状況」などで必要な対策が大きく変わります。

例えば、臭いが気になる場合でも 実験装置の排気で装置の排気自体が臭わないまで下げる必要はありません。屋根の上で排気しているので拡散されるので、排気自体はずっと高い濃度でも地面を歩く人は臭いはわかりません。

逆に密閉された空間で、内部に発生源がある場合などは異常な高濃度になってしまう場合もあります。ピットでの硫化水素事故などは換気できていないために発生します。

硫化水素で困ったときはご連絡ください。