設備保全について

設備が稼働しないということ

設備保全の価値を考えるとき まず、設備が部品の故障で稼働しないことがどういうことかを考えてもらいたいです。企業は利益を生むためのものなので、とりあえず単位をお金で計算してみてください。

単純な部品交換費用(ex.5万円のインバータと作業者1時間を2人で。。。)だけではありません。

生産ラインや周辺にもたらす影響を同時に考えてください。

「設備を止めない」ということがいかに大事かをまず、理解してほしいです。

計算のイメージ

いろいろな生産ラインがあるのですが、前職のラインイメージ(1ラインに20人くらい。全長50m。設備費用数十億?)でセンサーが1個壊れたとして話しをします。
ロスが発生する場所を理解するため、流れを考えます。

・センサーが壊れ、エラーでラインが停止します。

・ラインには設備の稼働を請け負っている人しか入っていないので、判断できる人(社員など、ラインの稼働責任者)に連絡が行きます。

・簡単に再稼働できるか判断し、部品交換が必要なら再稼働させるために部品交換する人を呼びます。

・部品交換する人が何が壊れたのか判断します。

・壊れた部品の型番を確認します。

・部品庫へ行き部品を持ってきます。

・部品を交換します。

・動作確認し、再稼働します。

・交換作業者は問題なく再稼働するか、立会ます。

工程を思いつくだけ書いても長いです。
実際には「壊れた部品の型番確認」一つとっても、「どのセンサーが壊れているか?」の調べ方やどこに「そのセンサーがあるのか?」を知らないと結構長い時間かかってしまいます。
予備部品がなかった場合など 代用になるセンサーを知らないとまた長時間。

交換が完了しても、良品すぐに良品にならないラインもあります。
クリーンルームの設備を担当していた時は製品の破損があると、そこから粉塵が出るということで 破損=数時間のロスになっていました。稼働後すぐも設備が安定しないのでダミー用のワークを流したり大変でした。

私の担当していた大半のラインでは小さなセンサー1個交換するだけでも、実際に良品がとれるまで1~2時間かかりました。
(知らない人が対応すると2倍以上かかることもあります。)
交換作業者も再稼働後の立会い含めると1~2時間は一つの対応に時間を取られます。

再稼働までの時間にはロスが発生しています。

・ラインのためにいる人の手が空きます。時給〇円の人が〇人〇時間のロス。

・前工程が止められない場合前工程での廃棄が発生します。

ほかにも

・ラインによっては再稼働後数時間良品が取れない場合

・停止時間によっては、生産予定が変わってしまう場合

などもあるでしょう。

全部足してみるといくらくらいになりそうですか?
「いろいろ手間がかかる」=「お金がかかりそうという」のはわかってもらえると思います。

上の計算がむずかしそうなら、製造ラインの付加価値で考えても良いです。

製造ラインの単位時間当たりの付加価値=(ラインをでた後の製品(半製品)の価格 - 投入する半製品の価格)* 単位 時間当たりの生産量 - 生産ロス(少なかったら無視)

私担当していたほとんどの製造ラインは前工程が止まらないラインで、稼働していても設備が止まっていてもかかるお金は変わらないラインが大半で、1時間止めると自分のボーナス以上のお金が飛ぶラインばかりでした。

保全方法の種類

ラインが止まることが、大きな費用的ロスがあることを理解した上で、どうやって設備を維持していくかを考えていきます。
私は部品ごとで3種類の保全方法に分けて考えていました。

バックメンテ

壊れたら、なおす。本当に壊れなければ一番手間がかかりません。なにもしないのですから。

バックメンテに挙げていた部品は
とまることがあまり問題にならないラインで使われる部品たちのほとんど。
信頼しきっている部品(良好な環境で使われている、信頼できる部品 スイッチ類やベアリング 減速機など) 

タイムベースメンテ(TBM)

時間で管理する保全です。どの会社でもあると思うのですが、時間がきたら交換する定期交換部品たち。生産中にとまるよりはましなので交換してしまいます。

タイムベースメンテに挙げていた主な部品は
とまって困るラインで使われるほとんど。
給油関係のほとんど(リニアガイド、ボールねじなど)
シリンダー類、PLCのバッテリーなど

時間がきたら、状態にかかわらず交換します

コンディションベースメンテ(CBM)

状態を把握して管理する保全です。部品の音や振動などから、そろそろ交換しておいた方が良いか、まだ使えるかを判断して管理していきます。「判断」この言葉が曲者です。判断には明確な判断基準もしくは経験が必要です。設備や機器がどんどん変わり、人も変わるとなると判断できる人なんてなかなか育ちません。

最近は波形の解析などが簡単にできるようになったのでMTシステムとか組み込んだりして、人を介さずできるようになってきましたがまだ人の手によるものの方が多いのではないでしょうか?

コンディションベースメンテの主な部品は
とまって困る高額な部品
大型の冷却ファンなどがありました。

保全計画を立てましょう

どの種類でメンテしていくか?

どの種類でメンテするかは、そのラインが止まることの影響とトラブル記録や経験から どれに当てはめるかを分類していました。

人の出入りを嫌う現場が多かった、人の入れ替わりが多いのでコンディションベースメンテは選択肢になく、
バックメンテとタイムベースメンテのどちらかを選択していました。

ここが、悩むところでした。

当然、定期交換部品を増やせば増やすほどコストがかかります。でも、交換しなければラインが止まります。

 

バックメンテが基本の部署

同じ社内にバックメンテが基本の部署がありました。理由は簡単「お金と時間がない」から。とてもかわいそうでした。

メンテしていないので当然部品が壊れ、ラインは止まる。 → 止まったら交換しに行く。 → ロスが出る → ラインが止まって怒られる。

別に担当者が悪いわけではないのですが、本当に忙しく部品交換。正規の予備部品がないから無駄に時間を使い他で代用したり、トラブルで部品交換すると、交換準備や片付けで余分な時間を取られます。

「生産ロスと部品代と交換費用。本当にメンテナンスにお金をかけないのが正しいですか?」

上司が理解がないのか?文化が違うのか?本当にメンテナンスにお金をかけない方が安く上がっているのか? 
わかりませんが、担当の精神衛生上は良くないのは確かだと思います。

 

タイムベースメンテが基本の部署

基本私の担当エリアは タイムベースメンテ が基本でした。

1~2年に一度くらいの長期停止時は調整が難しい部品、減速機を除くほとんどの市販品を交換していました。(はじめは少なかったのですが・・どんどん増やしていきました。)

はじめのころは「バックメンテ」に分類している部品についても一度でも壊れると稼働年数などからすべて「タイムベースメンテ」に変更していったためです。(一つの機械同じものが4個あって、それが4台あると16個交換部品が増えます)

たとえば、あるシリンダーの場合 
概算の動作回数からどのくらいで交換するか?=長期停止2回分(2~4年)で交換 としていても
通常時に壊れる=毎回(1~2年)交換 に変更となっていました。

逆に改善をしたので様子を見るため 交換期間を延ばしていくこともしていました。

長期停止前には 部品リストとトラブル記録(どこのどの部品がいつどのようにつぶれた?と交換時間の記録)とにらめっこしながら、期間を短くする部品と長くする部品を決めていました。

メンテナンス周期を伸ばすのが仕事

ほっておくと、どんどん部品交換が必要で、仕事が増えていき、使うお金も増えていく。でも、効果は見えにくくなっていく。(止まらないのが当たり前になってくる。)

一番良いのはメンテナンス周期が長い、寿命が長いこと。

つまり、「バックメンテナンス」で問題にならない「良好な環境で使われる信用しきっている部品」を増やすこと。

一般的な日本製やドイツ製など部品としての精度は十分信頼も十分です。
「良好な環境」をいかに作り出すかが部品の長寿命化のカギだと私は思います。

私の担当した設備では「高温」「粉塵」、一部「腐食性ガス」などもありましたが、それらからいかに部品を守るかが長寿命化につながります。

みなさんも、メンテナンス作業を減らしたいとおもったら設置環境の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか?

硫化水素が問題なら、コルラインがお力になれるかもしれません。