低濃度硫化水素測定はむずかしい

低濃度の測定は難しい

弊社では、低濃度の硫化水素測定にODO TRACKER という測定機を使っています。メーカーは7ppb(0.007ppm)から検出できると言っているものです。

依頼を受け、客先の測定や循環型脱硫装置のデモへ伺うことがあるのですが正直に言うとあまり行きたくありません。なぜなら検出できないことや数値が安定しないことが多いからです。

低濃度の測定をする環境は多くの場合発生源からある程度遮断された環境です。硫化水素を含むガスが積極的に入ってくる環境ではありません。

そのような環境では色々な要因で検出できないことや数値が安定しないことが多いです。その例を挙げます。

1.風向き

発生源から測定点までどのように流れてくるか?が重要です。循環型の設置場所は「できるだけ密閉してください」とお願いしていますが、完全に密閉できることはありません。どこかから侵入してきます。

風によって室内に硫化水素が運ばれ、その後中に滞留することがあります。

屋外での測定は当然風向きによって顕著に変わりますし、換気扇がついている部屋 気密性の低い部屋 も影響が大きいです。

2.発生源の影響

多くの場合 発生源が安定して一定濃度、一定量の硫化水素を発生しているわけではありません。

温度や酸素濃度などで硫酸塩還元菌の活動が変わる。特定の品種の生産の際に発生する。タンクなどに液注入されるタイミングで発生する。など発生源の設備を知らないとわからない場合もあります。

3.扉の開閉

先の2つよりわかりやすいです。単純に扉を開け閉めにより、外部の硫化水素が入ってくる場合があります。

ただし、扉の外だけが高濃度ではない場合があります。例えば、扉を開けたことで部屋の内圧が下がり、入線口から硫化水素が流れ込むなどがあります。「扉の外には硫化水素がないのに?」ということがありました。

4.エアコン

エアコンによる影響が多いです。「換気もできる」エアコンは当然外気(硫化水素含む)を入れる可能性が高いですし、通常のエアコンでも室内の空気を撹拌するので濃度に影響する場合が多いです。

以前、原因調査のため連続測定しているときに、何か上がるタイミングがあるけど何かわからない。部屋の中にいたら、一定温度になるとエアコンが強風に変わり気づくのですが、周りが影響していると思い込んで部屋の外にいたため長時間悩んだことがあります。

これらの、影響をなく低濃度を測定するには「金属片などを吊るし、金属片などを硫化させるタイプの測定」がお勧めです。一定期間 測定したい場所に吊るし、硫化の度合いで硫化水素の有無、濃度を評価します。これですと時間的な上下が吊るしている間の平均で見れるので短期的な影響なしで見れます。