タンク内の硫化水素ガスを吸い込み、中毒となった事例

発生状況

本災害は、リン酸精製工程において、純水タンク内の確認作業中に発生した。
 リン酸精製工程において、濾過器の濾材(フィルター)の交換作業を行った後、運転を再開したところ純水ポンプの異常が発生した。異常原因の確認のため被災者は純水タンクの上部マンホールを開けて水量を確認しようとしたところ、タンク内に混入していた硫化水素ガスを吸い込み意識障害等の中毒症状を発症した。別の作業者が被災者を新鮮な空気下に移動させて応急処置を施し、意識が回復した。その後救急搬送され、硫化水素ガス中毒と診断された。

 

原因

1  フィルターの交換後に行った濾過器の水圧テストの際に開いたバルブを閉め忘れたため、硫化水素ガスが純水タンクに逆流し、純水タンク内に硫化水素ガスが混入したこと。
2  ラインの配管に硫化水素ガスの逆流を防止するための逆止弁が設けられていなかったこと。
3  純水タンクのポンプ異常の復旧作業に際し、濾過工程の運転を停止せずに復旧作業を行ったこと。
4  濾過材交換作業に係る作業標準書に、交換作業終了後の濾過装置再稼働時にバルブが閉まっていることを確認する手順及びその方法が定められていなかったこと。

対策

1  純水タンクに繋がるラインの配管上に硫化水素ガスの逆流を防止するための逆止弁を設けること。
2  生産設備のトラブル対応作業時には、当該設備及びその関連設備の運転を停止させた上で行わせること。
3  濾過交換作業に係る作業標準に、交換作業終了後濾過装置の運転を再開する前に各種バルブの開閉状況が適正な状態になっているか確認する手順及び方法を加えること。

厚生労働省 職場のあんぜんサイト より

コメント

作業手順の重要性に合わせ、安全な設備設計の必要性を感じる災害です。
原因2.の「ライン中の配管に逆流防止弁がなかったこと」などはおそらく
1 手順を守れば不要だからということでつけていない。
2 腐食性のガスに対応した逆止弁が高価。
などが理由として考えられます。
人は手順を間違えるという前提で設備の設計をすることが大切だと、改めて感じる災害です。

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