この災害は、地熱発電所内の油分離槽室内で発生したものである。 地熱発電所では、蒸気井から取り出した蒸気は気水分離器により水と二酸化炭素、硫化水素を含む蒸気等に分けられ、蒸気等はタービンに送られ、その後二酸化炭素等を含んだ気体は大気に放出される。 大気に放出するために真空ポンプを使用するが、ポンプには潤滑剤、シール剤として大量の潤滑油を使用しているため、排出ガスに油が混じるので、排気管の途中のドレンタンクで分離し、排ガスは大気に放出し、油分及び水分は油分離槽に送って分離している。 被災者は、日常この分離槽の油かき取り作業等に従事しており、災害発生当日も昼食の後、午後2時頃より一人で油分離槽での作業を開始した。 午後4時すぎ、他の会社の作業者が、油分離槽の昇降用はしごの下でうずくまっている被災者を発見し、声をかけたが応答がないのですぐに同僚に連絡するとともに、救急車を呼び病院に運んだが既に死亡していた。 病院で被災者の調査をしたところ、肺、大腿筋、脳、心臓、肝臓、血液から硫化物が検出され、硫化水素中毒と判断された。
この災害の原因としては、次のことが考えられる。1 硫化水素ガスが油分離槽室に滞留していたこと2 油分離槽室の換気が不十分であったこと3 空気呼吸器等を使用しなかったこと4 安全衛生教育が不十分であったこと
この災害は、地熱発電所内の油分離槽室内で発生したものであるが、同種災害の防止のためには次のような対策の徹底が必要である。1 大気にガスを放出する排気管の構造等を改善すること2 ドレンタンクの構造等を改善すること3 油分離槽室に警報装置の設置等を行うこと4 作業マニュアル等を見直し周知すること5 安全衛生教育を十分に行うこと6 総合的な安全衛生管理を行うこと
厚生労働省 職場のあんぜんサイト より
硫化物を含む泉質の地熱発電所や温泉地などでは多くの箇所で硫化水素が存在しています。常にあるから、臭いにも鈍感になり、危険を忘れがちです。高濃度の硫化水素は命を奪う可能性のある危険なガスであることを忘れないでください。
「硫化水素」で困ったときは私たちにご相談ください。
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