この災害は、寒天を製造する工場内に設けられた廃液処理装置のPH調整槽内の清掃作業中に発生したものである。
この工場では、原材料をカ性ソーダおよび濃硫酸を用いて処理する工程で生じる廃液および工場内で排出される一般排水は、廃液処理装置の流量調整槽へ送られる。
流量調整槽へ送られた廃液および排水は、pH調整槽(コンクリート造、高さが1.8m、幅が0.65m、奥行きが1.5m)へ送られ、希硫酸またはカ性ソーダを注入して中和され、曝気(ばっき)槽に送られて処理が行われる。
災害が発生した日、pH調整槽内を空にし、工場長が槽内に入り汚泥をスコップでバケツに入れ、槽の上の作業員がそのバケツを引き上げ、空のバケツを降ろすという方法で槽内に残った汚泥の除去を行っていた。
2回目のバケツを引き上げるとき、工場長が「気持ちが悪い」といったまま意識を失ってしまったので、槽の上にいた作業員が救出しようと槽内に入ったところ意識を失った。さらに、救助に入った者が意識を失ってしまい、硫化水素中毒により工場長が死亡し、他の2名が休業した。