災害の発生したA事業場は、鉄鋼メーカーの依頼を受け主に製鉄原料および製品に関する各種検査および分析の事業を行っており、被災者は、同事業場において化学分析を担当していた。災害発生の概要は以下の通りである。 災害発生当日、被災者は、試験に使用する硫化水素ガスのボンベの交換を行うため、屋外のボンベヤードで単独作業を行っていた。作業手順は、[1] ボンベの圧力によりガスの残量を確認[2] 残量の少なくなったボンベをパイプラインから離脱[3] 同ボンベの場所に移動[4] 新しいボンベをボンベヤードに移動[5] 新しいボンベをパイプラインに装着 という順序であった。 被災者は、残量の少なくなったボンベをパイプラインからモンキースパナ、スピンドル用ハンドルなどを用いて離脱した後、同ボンベを移動する作業に取りかかった。この際、スピンドル用ハンドルがボンベの移動にじゃまになると考えた被災者は、同ボンベのスピンドル部に同ハンドルを装着したまま移動させた。ボンベを転がしながら進んでいたところ、同スピンドル用ハンドルが壁にぶつかり、スピンドルが「開」になり突然ガスが噴出した。 被災者は、顔に向けて突然ガスが吹きかかったため、急いで4~5m退避したがすでにガスを吸入しており、その場で昏倒し意識不明となった。 被災者はその後、異臭に気付いた同僚に発見、救助され、病院に担ぎ込まれた。
[1] 硫化水素ボンベの着脱に際する処置が不適切であったこと。[2] ボンベの交換作業に関する作業標準が確立されていなかったこと。[3] 単独作業であったこと。
[1] 硫化水素ボンベおよびその他のボンベを交換する場合の作業標準を作成し、これにより日頃から関係作業者に対して教育・訓練を行うこと。 [2] 危険を伴う作業については極力単独作業は避け、2人以上で作業を行うこと。
厚生労働省 職場のあんぜんサイト より
ボンベを運搬することは私もしますが、ボンベの開閉用のハンドルを付けた状態で、運搬をするのは「厳禁」です。作業者自身が危険を理解し、自らを守る体制を作っていくことが必要だと思います。
他の被害事例はこちらから