A会社は、調査井を掘削し、地熱エネルギー資源の開発調査を行う会社である。
今回A社が請負った地区は、周辺に三箇所の温泉地と既設の地熱発電所がある地区で調査井が9本あった。
この調査井は、3年前に噴気試験が実施され、蒸気量、温度調査等が行われており、高温蒸気の継続噴出の確認後、バルブを閉め、噴気は停止されていた。
今回の調査は、発電用蒸気の安全供給の確認のため、各調査井を噴気させた場合の噴出蒸気量、蒸気噴出時の圧力変化の調査であった。
災害発生当日は、午前8時45分に現場に集合し、ミーティングを行った後、作業を開始した。ミーティングでは、No1~No4バルブの開閉順序等作業手順の他に酸素呼吸器を使用する等の安全指示も行われた。酸素呼吸器の使用が指示されたのは、蒸気の噴出の際に硫化水素を含む不凝縮ガスが放出される可能性があること。噴出蒸気中に硫化水素が含まれている可能性があること等のためである。
作業者甲、乙、丙の3名は、No3バルブを手動で開放し、次に遠隔操作でNo2バルブを若干閉めた。その後、No1バルブを開放するため、酸素呼吸器を着用して、コンクリートピット内に入った。No1バルブを半分程開放した際に、ハンドルがさびついていたためにバルブがまわらなくなった。この際3名は、かなりの力を入れてバルブをまわしたため汗だくとなり、また、蒸し暑い1日でもあったので、思わず着用していた酸素呼吸器のマスクを顔面からはずしてしまった。この時、3名は腐卵臭のガスを嗅いで、その場でうずくまってしまった。
外で作業を見守っていた監督者等が異常に気づき、3名を救出したが、3名とも硫化水素中毒で入院した。