本災害は、工場内での産業廃液処理槽で中和処理を行う作業において発生した。
作業は、処理槽で硫酸銅系の産業廃液(液中に硫酸銅10%と硫酸8%が入っているもの)を中和剤(水酸化ナトリウム)で中和し、水酸化銅の沈殿とし、さらに硫化水素ナトリウムを加えて難溶性の硫化銅の沈殿として脱水処理するものである。
災害発生当日、作業者Aは廃液処理作業を行っていた際、廃液と中和剤との総量が処理槽の容量を超えたため、中和剤の投入を中止した。さらに、作業を終了させようとし、処理槽に硫化水素ナトリウムを投入したところ、十分に廃液が中和されていなかったため、廃液中の硫酸と反応し硫化水素が発生した。近くで別の処理作業をしていた被災者Bは腐卵臭を感じたため、避難したが、帰宅後吐き気、めまい等を訴え、病院で診察されたところ、硫化水素中毒と診断され入院した。