本災害は、水産食料品製造工場から排出される汚水の処理施設の汚水槽の排水バルブ修理作業中、槽内に立ち入った作業者が硫化水素を吸入し、意識を失って汚水中に転落し、被災した。さらに、救出しようとした作業者2名も被災したものである。
この処理施設では、水産食料品製造工場から排出される汚水の浄化を行っている。汚水槽には、魚介類を加工する際に出る汚水が、1日に30から40トン程度流入する。この中には、魚介類の血、皮、骨等が混入している。
嫌気性菌による汚水中の有機物の腐敗を防ぐため、空気ポンプによる汚水中への送気、汚水のかくはん等の装置が設けられているが、災害発生前数カ月間は稼働されていない。
災害発生当日、汚水槽から汚水があふれているため点検が行われた結果、汚水の配管に取り付けられた逆流防止弁が腐食し、破損していることがわかった。このため、作業者3名で破損した逆流防止弁を修理することとし、汚水槽内に入り、弁周辺の汚水配管の切断作業を行うこととなった。うち1名が、脚立を用いて汚水槽の上部から内部に降りようとしたところ、槽内の酸素欠乏等の空気を吸入して意識を失い、汚水中に転落した。このため、他の2名が災害発生の通報を行った後、被災者を救出するため槽内に降りようとしたが、2名とも同様に被災し、この2名は死亡した。
作業に当たって、安全帯等は使用せず、汚水槽内の換気は行われていなかった。また、救出時に空気呼吸器等は使用されていなかった。