ゴミ焼却場でゴミを投入中、焼却炉に落ちる

発生状況

この災害は、ゴミ焼却場において、焼却炉に廃棄物を投入する作業中、作業者が炉内に転落したものである。
 この会社は、主として建物清掃、洗車、廃棄物処理等を請け負っているが、月に一度は使用済みの紙類を麻袋に詰めてゴミ焼却場まで小型トラックで運送し、麻袋を切り開いて焼却炉に投入する作業を行っていた。
 災害発生当日、被災者は、同僚と2人で朝からこの作業に従事し、午前中には40袋を処理し、午後にも残りの処理をするため、40袋を運んで1 時少し前に焼却場に到着した。
 午前と同様にピットのところにトラックを後ろ向きに停車させてから、荷台から麻袋を降ろしてカッターで斜めに切り開き、二人で中の紙類を投入する作業を行った。3 個目の投入が終わり、同僚が次の麻袋を荷台から降ろしていた時に、「アー」というような声を残して被災者が投入口のスロープを滑るように焼却炉の中に転落した。異常を知った焼却場の職員達が駆けつけてきて、一人が縄ばしごで降り始めたが、「ガスがひどい」と引き返し、救急隊を呼んで救出したが既に意識はなく、約11時間後に肺水腫で死亡した。

原因

この災害の原因としては、次のようなことが考えられる。
1 焼却炉の中に硫化水素が発生していたこと
 災害発生後に焼却炉の中の環境測定を行ったところ、ゴミ表面の酸素濃度は15%程度、それより1.5m上は20.6%程度であり、硫化水素は同じ位置でそれぞれ15ppm、20.5ppmであった。酸素欠乏症の可能性もあるが、死亡診断書によると肺水腫となっているので、硫化水素が焼却炉の中で発生していて、それによる中毒の可能性が高い。
2 スロープのあるピットのところで作業を行ったこと
 この焼却場には投入口が5ヵ所あり、通常は平らな鉄板の上にゴミを置くと機械が自動的に投入する形式のもののみを使用していたが、そちらの方のゴミが一杯であったので、当日はゴミ収集車用となっているスロープのある投入口を使用していた。
3 安全帯を使用しないで投入を行ったこと
 投入口の入り口には、「墜落注意」の表示がしてあり、安全帯の取付け設備も設けられていたが、2人とも安全帯を使用していなかった。

対策

同種災害の防止のためには、次のような対策の徹底が必要である。
1 ゴミ収集車用投入口はゴミ収集車によるゴミの投入以外には使用させないこと
 焼却炉の管理者はゴミ収集車によらない手作業によるゴミ投入は原則として投入口に近寄らないで投入することのできる設備のある投入口の使用を徹底する必要がある。
 やむをえず、墜落危険のある投入口を使用させる場合には安全帯の使用を指示し、使用状況を確認する必要がある。
2 炉投入口には墜落防止措置を講じること
 通常はゴミ収集車専用の投入口であっても、墜落の危険のある場合には、墜落防止柵および安全帯の取付け設備を設置し、柵および安全帯を用意しておく必要がある。
3 安全帯を使用すること
 焼却炉への投入作業を行う作業者は、必ず安全帯を携行し、墜落の危険のある投入口使用を指示されたときには、安全帯を使用して作業を行うようにする必要がある。
4 硫化水素中毒等についての教育を行うこと
 ゴミの焼却炉の中は、硫化水素および酸素欠乏による危険が高いので、関係作業者には衛生教育を実施する必要がある。

厚生労働省 職場のあんぜんサイト より

コメント

硫化水素の発生を予期していない環境で、硫化水素が発生していたようです。
災害発生後の環境測定で ゴミ表面から1.5mの濃度20.5ppmとありますが、もし本当に硫化水素が原因ならもっと高い濃度であったことが予想されます。ゴミなどから発生するガスの濃度は変動が大きく、その時々で大きく変わるので注意が必要です。可能なら連続測定で濃度を確認することをお勧めします。

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