この災害は、製造工程で発生した硫化水素を吸収するタンク内の内容物を処理する作業中に発生したものである。
硫化水素吸収タンク内には、製造工程で発生した硫化水素およびトルエンが配管で送り込まれる。タンク内に送り込まれた硫化水素は、タンク内に入っている苛性ソーダ溶液に吸着され、水硫化ソーダとなり、比重の軽いトルエンの下に滞留する。
このタンク内のトルエンおよび水硫化ソーダは、それぞれ専用のコンテナに抜き取られる。
次いで、トルエンを抜き取ったコンテナからは、混入した水硫化ソーダをコンテナ底部のノズルから抜き取りトルエンを回収する。このトルエンの回収を行う前に、コンテナ内壁に付着した水流化ソーダを洗い落とすため、フレキシブルダクトの先端に取り付けられた局所排気用のフードを蓋にかぶせて、フード開口部から散水する作業が行われる。(図)
災害が発生した日、被災者は、コンテナ内面に付着している水硫化ソーダを洗い落とすため、脚立に乗ってコンテナの蓋を開け、この蓋に局所排気用のフードをかぶせ、コンテナ内に散水していたところ、「臭い」と言いながら脚立を降りてきて数歩歩いた後、崩れるようにして倒れた。