この災害は、推進工法による下水管の敷設工事において発生したものである。
この工事は推進延長52.1mの計画であったが、約36m推進した地点で計画より上方に2cmずれていることが判明したので、推進方向の修正を行うことになり、下水管(直径25cm、厚さ1cm、長さ110cmの硬質塩化ビニール製)を5~6本抜き取ることにした。
当日、現場に入場したのは元請の現場代理人A、直接作業を行う二次下請の作業指揮者B及び立抗内で作業を行うC、地上で推進機の操作を行うD、地上で雑用を行うEであった。
作業は、朝から開始され、遠隔操作によって塩ビ管を30cm程度手前に引き寄せたときに、塩ビ管のゴムパッキンのところから水道の蛇口を少し捻ったときの量程度の地下水が漏出してきた。
この水が推進機の電気系統に入ると故障の原因となるので、BとCが立抗内に降り、パッキンを推進方向に戻して地下水の流れを止めようとしたが止まらなかった。
そのため、掘削作業をそのまま続けることにしたが、途中で突然Cが意識を失ってその場にうずくまった。
また、地上で推進機の操作を行っていたDは、立抗内から「送風機をつけてくれ」という声が聞こえたので、送風機のスイッチを入れて立抗内を見たところ、Cがうずくまっており、Bははしごを登ってきていたが地底から約6mのところにきたところで意識を失って墜落していった。
これを見たDは、はしごを降りて救助に向かい、B、Cの順にはしごを使って肩で上に押し上げるようにして立抗内から救助したが、Dも救助活動終了とともに地上で意識を失った。