この災害は、硫化亜鉛の製造工程において、硫化水素発生器の洗浄水を硫化水素吸収塔に投入する作業中に発生したものである。
硫化亜鉛は、硫化亜鉛反応器内で前工程から送給された硫酸亜鉛に硫化水素を加えて生成する。硫化亜鉛反応器内に残った未反応の硫化水素は、硫化水素吸収塔に送られて、水酸化ナトリウムが加えられ硫化ナトリウムが生成する。この硫化ナトリウムは硫化水素発生器に送られ、硫酸が加えられて生成した硫化水素は硫化亜鉛反応器に戻して再利用される。
災害が発生した日の数日前、硫化水素発生器を洗浄し、その配管に残った洗浄水をバケツ9杯に溜めていた。
災害が発生した日、被災者は、溜められていた洗浄水の入ったバケツを硫化水素吸収塔まで台車に載せて運び、バケツから硫化水素吸収塔のマンホールへ洗浄水を直接投入する作業を行っていた。そして、3杯目の洗浄水を投入したところ、煙のようなものがタンク内部からマンホールの外に向けて排出されてきた。この煙を吸入した被災者はその場に倒れ込み意識を失ったので、近くにいた同僚が救急車を手配し病院に搬送し、診察を受けたところ硫化水素中毒と診断された。