この災害は、農薬原料の製造工程で硫酸を用いて中和を終えた反応槽内の結晶を洗い流す作業中に発生したものである。
農薬原料の製造工程は、原料の中間体にメタノール、二硫化炭素、苛性ソーダなどを加えて反応槽で攪拌して反応させるものであるが、反応により生じた副生成物としての硫化水素と残留したメタノールを除去するため加温し、ろ過槽を経て中和槽へ送給し、硫酸を加えて中和する。
中和槽では、発熱反応が行われるので、一定の低温度に保持しながら硫酸が加えられる。そして、中和の際に生じる不純物を除去するために一定温度に加温した後、遠心分離機に落とし込み結晶を取り出して製品とする。
災害が発生した日、被災者は、中和の終えた中和槽内の結晶を遠心分離機に落とし込んだ後、中和槽の内壁に付着した結晶を遠心分離機に落とし込むため、ホースを用いて中和槽の原材料の投入口を開けて放水していた。この時、原材料投入口をのぞき込むようにして放水していたが、急に意識を失い倒れ込んだので病院に収容し医師の診察を受けたところ、硫化水素中毒と診断された。