この災害は、農薬製造工場において排ガス処理装置の排気口から出た高濃度の硫化水素を吸入して中毒となったものである。
災害発生当日、被災者は、同僚と2名で農薬の中間製品の貯蔵タンクの清掃作業に従事していた。
この貯蔵タンクは、農薬を合成する反応工程中に副生する硫化水素などの排ガス用処理装置に隣接しており、その排気口は被災者がいた高所作業床付近に位置していた。
通常、この排ガス処理装置内では、酸化・還元反応をさせて排ガスを無害化するようになっているが、たまたま排ガス処理装置への中和剤の注入が止まるという事態が生じたため、高濃度の硫化水素ガスが排気口から排出された。
タンクからの排出物を搬出する作業を被災者と行っていた同僚が、被災者の応答がなくなったことに気付き、周りを見渡したところ、意識を失って作業床に倒れているのを発見した。
救出後、被災者は1時間以内に意識が回復したが、急性硫化水素中毒のため入院治療を受けるに至った。
なお、作業中、両名は、防毒マスクなどの保護具は着用していなかった。