この災害は、廃棄物タンク内の貯蔵物をタンクローリー車に移送する作業中、タンク内に入り、貯蔵物から発生した硫化水素ガスを吸入して中毒にかかったものである。
この貯蔵物は、リグニンスルホン酸化合物を主成分とするコンクリート用化学混和剤の保管中に生成した沈殿物である。
災害が発生した日、この貯蔵物を産業廃棄物処理業者が所有するタンクローリー車に移送する作業を始めた。この作業のため、前日に、タンク内の貯蔵物の流動性を高めるためのばっ気撹拌を行った。
移送の作業は、タンクローリー車の運転手が真空ポンプを操作し、委託元の担当者と業者の作業員とがタンクの上部に上がり、担当者がマンホールから空気ホースを入ればっ気撹拌を行い、作業員が吸引ホースで貯蔵物を吸引していた。吸引を開始してから15分後、貯蔵物がタンク底部に約10センチメートル残っている状態で、担当者がタンク内に入り残った沈殿物を吸引することとなった。そして、担当者は、タンク内のタラップでタンク底部まで降りたところ体調の異常を感じ、タラップを2段ほど上がりかけたが失神してタンク底部に転落した。この様子を見て救助のためタンク内に入った作業員も倒れ、さらに、救助に入った2名の計4名が中毒に罹ったものである。