本災害は、下水管の清掃作業を行っていた作業者が、汚泥から発生した硫化水素を吸い込んで中毒となったものである。
災害発生当日は午後1時30分、作業を開始した。この日の作業としては、まず、ホースの先に船型のアイアンノズルをつけたものをマンホール[2]から投げ込んで、下水管の中を上流のマンホール[1]まで通す。次に、アイアンノズルから高圧の水を噴射させながら引き戻し、汚泥を下流側に引き寄せて、汚泥車でこれを吸い取るという予定であった。
まず、ホースを、下水管の中でマンホール[1]に向けてほぼいっぱいの約120m伸ばし、そこから汚泥を引き寄せながら約10mまきもどしたところ、途中でひっかかり動かなくなった。
そこで、ホースのひっかかりをはずすため、副班長のAが、マンホール[3]のふたを開けさせ、このなかへ入って行った。そして、約1mのバールでホースをゆすっていたところ、気分が悪くなり、外へ出ようとタラップを握ったが気を失って倒れた。
これを見ていたB、Cが助けに入り、Aをかかえあげたが、B、Cも、ともに気を失って倒れた。
連絡を受けたDが救急車を呼んだあと、Eと共に続いて救助のためマンホールに入り、3人をかかえたが、息苦しくなり同じく気を失った。しばらくして、救急車が到着し被災者5名を救出した。
なお、会社には、送風機、送風用ダクト、空気ボンベ、空気呼吸器等が常備してあったが、作業者が6名以下の場合は、資材を持つ人手が足りないため、災害発生当日を含めて現場に持っていっていなかった。