下水道清掃業における硫化水素中毒

発生状況

K清掃(株)は、下水道汚水管路、マンホール内の砂、汚泥等の清掃を主に行っている。
 Y市下水道局から、「伏せ越し管」(法水管路の敷設延長上にガス管等の地下埋設物がある場合、さらに管路を深く埋設している下水道汚水管)に大量に堆積している汚泥等を清掃除去する作業を請け負った。災害の発生した下流側のマンホールは、図に示すとおりの構造であり、伏せ越し管は路面から約11mの深さにある。 
 災害発生当日、作業者Aら5人は、午前9時頃から換気ダクトをマンホール内中間付近まで降ろし、送風換気し、同時にピット(汚泥ため)にたまっていた汚水をポンプで排水した。
 30分ほど待機したあと、送風機を停止し、A、B、C、Dの4人は下流側のマンホール内に入孔した(排水用ポンプは稼動させたままであった)。A、Bの2人は、伏せ越し管の汚泥等の堆積状況と汚水の排水状況を確認するため、先に中段スラブ(路面から約5mの深さにある踏場)から下に降りたが、すぐに、気分が悪くなったと言って順に中段スラブに上がってきた。中段スラブにいたC、Dの2人も慌ててマンホールの外に出ようとした。先頭で上がってきたDがステップの中ほどまで登った時、他の者は次々とマンホール内で倒れた。救助に入ったEも1mほど進んだ所で被災し、自力で脱出した。約30分後、消防士によって救出され、5人全員が直ちに病院に収容されたが、硫化水素中毒により3人が死亡し、2人が休業した。

原因

[1] ポンプによる排水のため水面が低下、伏せ越し管天井部にたまっていた硫化水素がマンホール内に吹き出したこと。 
[2] マンホール内作業の硫化水素中毒発生の危険性について、十分な認識をしていなかったため、作業前に作業現場の下調べ、作業打ち合わせを十分に行っていなかったこと。
[3] 送風機を止めて入孔したこと。
[4] 排水作業が終了する前に入孔したこと。
[5] 酸素欠乏危険場所に入る際に有効な呼吸用保護具(送気マスク、空気呼吸器等)の着用を行わなかったこと。(マンホール内で作業を行っていたA、B、C、Dはもとより、救出に向かったEも有効な呼吸用保護具を着用していなかったため二次災害に至った。)

対策

[1] ポンプによる排水のため水面が低下、伏せ越し管天井部にたまっていた硫化水素がマンホール内に吹き出したこと。
[2] マンホール内作業の硫化水素中毒発生の危険性について、十分な認識をしていなかったため、作業前に作業現場の下調べ、作業打ち合わせを十分に行っていなかったこと。
[3] 送風機を止めて入孔したこと。 
[4] 排水作業が終了する前に入孔したこと。
[5] 酸素欠乏危険場所に入る際に有効な呼吸用保護具(送気マスク、空気呼吸器等)の着用を行わなかったこと。(マンホール内で作業を行っていたA、B、C、Dはもとより、救出に向かったEも有効な呼吸用保護具を着用していなかったため二次災害に至った。)

厚生労働省 職場のあんぜんサイト より

コメント

硫化水素は汚泥から発生することがあります。今回(伏せ越し管の天井)のように空気が動かないところでは高濃度になっている場合が多くあります。排水の溜まる、空気の動かない場所には注意を払ってください。

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