し尿処理場の脱臭設備修理工事における硫化水素中毒

発生状況

本災害は、し尿処理場の脱臭設備の送風機を修理するために、ダクトを一部取り外して修理を行っていたところ、硫化水素がダクトから吹き出し、被災したものであり、一緒に作業を行っていた作業者も救出しようとして、同様に被災したものである。
 このダクトは、し尿槽内に送風機で空気を送り(ブロア)、その空気を排気する(ファン)ためのもので、取り外した部分は排気側の空気吹出口であった。
 災害発生当日は月曜日の朝で、し尿処理場は土、日が休日であった。
 し尿処理場には修理を担当する作業者A、Bと修理発注者Cがいた。
 A、Bは、地下1階で排気側のダクトを取り外し、送風機の修理作業を開始した。Cは地下1階の作業が行われているため、換気をしようと地上と通じた地下1階のシャッターを開け、地下2階へ行ってスイッチ盤を操作し、送風機のスイッチを入れた。
 Aは、瞬間に気体が吹き出してきたので、送風機を止めるためスイッチのある所へ行こうとした。
 振り返ると、一緒に作業をしていたBが倒れているので、救出しようと戻ったところ、Aも気体を吸い込み被災した。
 吹き出した気体は、硫化水素を含む有毒な気体であった。

原因

[1] 作業を開始する際に、硫化水素等有毒な気体の流入を防止する措置が講じられていなかったこと。 
[2] 修理作業における作業手順が作成されていなかったこと。
[3] 作業に従事する作業者に対し、必要な教育を行っていなかったこと。

対策

[1] 硫化水素が流入しないよう、必要な措置を講じること。また、ブロアの起動防止の表示等を行うこと。
[2] 酸素欠乏危険作業主任者を選任し、所定の事項を行わせること。 
[3] 作業の方法、順序等作業手順を決定し、あらかじめこれらを作業に従事する作業者に周知・徹底すること。
[4] 作業者に対し、酸素欠乏症等の防止に関する特別教育を実施すること。

厚生労働省 職場のあんぜんサイト より

コメント

 私たちもフィルター交換作業に入ることがありますが、多くの場合ブロアの起動スイッチに「安全札」(スイッチ操作禁止を示す札)を設置。配管内の硫化水素濃度測定後作業開始します。作業前ミーティングなどももちろんします。
 自分たちが危険な作業をしているという認識があるからだと思っています。自分の作業が危険であると理解することが安全への一歩です。自分を守るために自分の作業を理解し、安全に努めましょう。

他の被害事例はこちらから