この災害は、ダンボール原紙製造工場において、一時休止していた抄紙(しょうし)機の運転を再開する作業中、ピット内で発生した硫化水素によって作業者が中毒したものである。
この工場は、古紙を処理した液状の古紙パルプを抄紙(しょうし)機により加圧、脱水した後、乾燥して板紙状のダンボール原紙を製造しているが、紙質を硬化させるため抄紙(しょうし)工程に移る前に硫酸が混入される。なお、抄紙(しょうし)機の後端部下方にはピットがあり、抄紙(しょうし)機により加圧、脱水された古紙パルプ(湿紙)から出てくる湿紙の切れ端等の残滓が希釈水とともに搬入され、ピット底部にある電動攪拌機によって撹拌されて、原料処理工程に還元されている。
災害発生当日、抄紙(しょうし)機の運転を再開したが、そのとき稼働するはずの高圧シャワーが噴出しないため、作業者Fがピットから約3メートル離れた場所まで行って、高圧シャワーバルブの開放と調圧作業をしていたところ、ピット内から流れ出してきた硫化水素により、意識を失いその場に倒れた。
この状況を見ていた作業者G以下4人は直ちにFを救出しようとして本人に近づいたが、Gを除く3人が次々とその場に倒れた。