この災害は、化学工場内における修理作業の一環として行われた排水処理設備汚泥貯水槽の清掃作業の際に、発生した硫化水素により作業者2名が中毒になったものである。
災害発生当日、汚泥貯水槽内の清掃作業が午後から半日程度の作業として計画されていた。作業に先立ち、発注元事業所の監督者Aが作業場所内計12箇所において作業環境中の酸素濃度および硫化水素濃度の測定を行ったが、すべての測定箇所において作業環境中の酸素濃度が21%以上、同じく硫化水素濃度が0.1ppm以下であったため、エアラインマスクを使用しないで作業を行うこととした。これを受けて当工事の2次下請け事業所の監視人Bの監視下で3次下請けの作業者CとDは槽内に入り清掃作業を開始した。また、この際作業場の換気も行わなかった。
作業開始後まもなく、作業個所周辺で硫化水素の臭気が強くなったため作業者CとDは直ちに槽内から出るよう指示受けたが、まもなく作業者Cが汚泥槽内で倒れこれを救助しようと試みた作業者Dもその場に昏倒してしまった。
2名ともその後、監視人Bらに救助されたが、搬送先の病院の医師により両者ともに硫化水素中毒と診断された(うち1名は休業10日)。なお、当日現場には第2種酸素欠乏危険作業主任者技能講習を終了した者は立ち会っていなかった。